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020:自己啓発セミナー

2008年7月 9日 (水)

『純愛』出資者こそ最大の被害者では……

 先週発売の週刊実話(08.07.17号)で、

ゆず・北川悠仁の実家「宗教団体」が支援の怪しいビジネス

 という記事を書きました。このブログやオーマイニュースで取り上げてきた偽装映画『純愛』と、北川悠仁の親族らが経営する自己啓発セミナー会社「ETLジャパン」・宗教団体「かむながらのみち」の関係をリポートする内容です。

 そして今週発売された週刊朝日(08.07.18号)では、ぼくが書いたものではないですが、こういう記事が載っています。

あの“怪しい映画”を外務省や議員が「応援」していた!

 参議院議員・山谷えり子氏らが偽装映画『純愛』を支援し、北京での上映会に高村外相など計4人の議員が祝電を送った件についての記事です。議員の支援については、すでにぼくもオーマイニュース 山谷えり子議員らが偽装映画『純愛』を支援 で書いています。この部分については週刊朝日の記事もおおむね同じ内容ですが、週刊朝日では、映画の出資者らのコメントや証言がみっちり載っていて、この映画のインチキぶりが非常によくわかります。
 たとえば、記事中、こんな出資者コメントがありました。

「いちおう出資者には年に2回の収支報告があった。でも、大ざっぱで明細がない。中国のロケハンで4千万円も使っていたので尋ねると、「中国人に監禁され、払わないと帰さない、と言われたから』と荒唐無稽な説明をされた」

 映画の制作資金として出資者からかき集めたカネは約1億円です。その4割にもなろうかというカネを、撮影する前から「中国人に監禁」されて取られてしまうとは。これが本当なら、収支報告と別に出資者に報告・説明すべき大事件なのではないでしょうか。仮に、監禁の事実などなく、使途不明のカネについて言い逃れをするためのウソだとすれば、「日中友好をうたった映画の関係者が、中国人のせいにして言い逃れするなよ」という話になると思います。

 中国という国でのことですから、何が起こるかわかりません。監禁事件が本当なのかでっちあげなのか、判断はつきにくいですが、いずれにしても、『純愛』が自分たちの仲間であるはずの出資者に対しても非常に不誠実であることがわかるエピソードです。

 オーマイニュースや週刊朝日の記事には出てきていませんが、もうひとつ、『純愛』が出資者に対していかに不誠実であるかを示す資料が手に入ったので、その一部を紹介しつつツッコミを入れたいと思います。オーマイニュース 山谷えり子議員らが偽装映画『純愛』を支援 が掲載された日付と同じ6月24日付で、出資者に配布されたリリースです。発信者は『純愛』製作実行委員長の奥山省吾氏です。
 この中に、「オーマイニュース」と媒体名を特定した上で、以下のような記述がありました。

6.ネット記者の記事、取材について
 NPO事件をきっかけに、オーマイニュース編集部の記者が「純愛」に関する様々な記事をウェブ上に掲載しています。
 純愛サイドとしてはオーマイニュース及びその記者からの取材に対し、担当弁護士とも協議の上、取材拒否の姿勢を貫いております。従ってオーマイニュースに掲載されている記事は正規の取材に基づくものではございません。
 オーマイニュース及びその記者に対する取材拒否の理由は以下の通りです。
・数年前に正規の取材なしに中傷記事を掲載し、それに対する説明も謝罪もない。
・「純愛」公開後も、偽名を騙って観客に成りすまし小林桂子さんに近づき、写真を撮影、ウェブ上に無断で配信するなど、取材者としてのモラル欠如が著しい。
・関係者への取材に際し、「純愛サイドは~と言っているが」と虚偽を申し向けた上で話を聞き出そうとしている。
・掲載内容も独自の先入観に基づくものであり反論する必要性さえ感じられない。
 オーマイニュース及びその記者の活動により、私達「純愛」のスタッフのみならず、関係者の皆様にもご心配とご迷惑をおかけしております。この場をお借りして、お詫び申し上げます。

 ウソも混じっていますが、全体的には、事実を奥山氏の勝手な解釈で釈明の材料にしているという感じでしょうか。
 ぼくとしては勝手なことを言われて正直ムカつくんですが、この文面を見ていると、奥山氏が実はオーマイニュースや藤倉に対してではなく、出資者に対してこそ不誠実であるということがわかります。上記の文章について、ひとつひとつツッコミを入れていきます。

純愛サイドとしてはオーマイニュース及びその記者からの取材に対し、担当弁護士とも協議の上、取材拒否の姿勢を貫いております。

 ↑これは完全なウソです。今年1月に藤倉が札幌で奥山に突撃した際、奥山氏は「弁護士に聞いてください」と言い、「取材拒否」とは言いませんでした。3月に名古屋で奥山に突撃したときも同じでした。
 実際ぼくは、1月の突撃の後には『純愛』側弁護士と会談し、オフレコで『純愛』側の事情について説明を受けました。3月も、こちらの質問事項を弁護士が奥山氏に確認した上で答えてくれており、その内容はオーマイニュース 偽装映画『純愛』、名古屋で公開 に記載しています。
 このことからわかるように、奥山氏は「取材拒否の姿勢を貫いて」などいません。

したがってオーマイニュースに掲載されている記事は、正規の取材に基づくものではありません。

 ↑これは事実ですが、だからどうしたって感じですね。正規の取材じゃなくたって、記事の内容に誤りがなければ問題ないと思います。 仮に、正規の取材がない記事はデタラメだと奥山氏が言いたいのだとしたら、奥山氏がぼくに対して何ら正規の取材もせずに流したこのリリースもまたデタラメだということになります。

 奥山氏は、自分の行動が自分の主張をぶち壊していることの滑稽さに気づいていないのでしょうか。

数年前に正規の取材なしに中傷記事を掲載し、それに対する説明も謝罪もない。

 おそらく藤倉の個人サイト「自己啓発セミナー対策ガイド」内にある 小林桂子・映画企画 3ヶ月で7,000万円のカネ集め小林桂子映画、クランクイン決定 の2本の記事を指すと思われます。
 いずれも物証・証言から確証を得て書いた記事であり、この記事に対して奥山氏らからは「内容が事実と違う」といった類の指摘は一切ありません。事情説明も求められておらず、謝罪の要求もありません。ともと藤倉が説明や謝罪をすべき状況にないため、説明や謝罪がないことを取材拒否の理由にされる筋合いはありません。

「純愛」公開後も、偽名を騙って観客に成りすまし小林桂子さんに近づき、写真を撮影、ウェブ上に無断で配信するなど、取材者としてのモラル欠如が著しい。

 ↑偽名を使ったこと自体は事実ですが、モラルの欠如によるものではありません。むしろ、ほかの観客もいる劇場内で興行の妨害につながるような形での取材はしないというモラルに基づいたものです。

 今年1月のオーマイニュース 偽装映画『純愛』の札幌公開始まる『純愛』の小林桂子氏を直撃取材『純愛』小林桂子氏に直撃で恐縮です といった記事・写真・動画でのリポートのほか、その後の記事でもこのときの写真等を使用しています。
 一般的には好ましい取材方法ではないと思われるかもしれませんが、昨年12月の第一報の際、『純愛』側は取材を受けるような受けないようなどっちつかずの態度で返答を引き延ばしながら、結局、記事の掲載直前になってから「お答えできません」と回答してきていました。また、NPO法人の偽装、公式サイト上での虚偽説明(当ブログ 映画『純愛』公式サイトのウソを暴く! 参照)などから、常識が通用しない人々であることが明らかであり、こうした人物や団体に対する潜入取材としては、とくだん問題ないと思います。
 また、たとえ潜入取材であっても、現場で彼らの活動(この場合は映画の上映)を妨害しないというのは鉄則です。上映会場で混乱をきたすような取材方法は「業務妨害」になりかねません。会場や観客に迷惑をかけず、現場での活動妨害は慎むというモラルに基づけば、むしろ素性を明かさない取材方法がベターでした。
 この取材のすぐ後、会場の外に出てから、興行の妨害につながらない形で「オーマイニュースです」と名乗って小林氏らに直撃取材をしています。上記の記事・動画などを見ていただければわかります。

 なお、前述の通り、この取材の後に奥山氏らは弁護士を通して取材に答えています。ですから上記の「モラル」について奥山氏がどう解釈しようと、1月のこの件は彼らが取材を拒否する理由になっていません。

関係者への取材に際し、「純愛サイドは~と言っているが」と虚偽を申し向けた上で話を聞きだそうとしている。

 ↑何について「虚偽」と言ってるのか不明ですが、取材申し入れの際、相手に説明するのは、基本的に記事として掲載予定あるいは掲載済みの事実だけです。もちろん、取材を受けてもらえて細かいやりとりができるようになったときには、未確認情報をぶつけて尋ねたりカマをかけることも一般論としてはありますが、幸いにも(?)『純愛』に関しては、そんな微妙な取材をしなくても、ぼろぼろとインチキ振りが見えてきています。
 そういうわけなので、取材の際の藤倉の説明が虚偽なのだとすれば、実際に掲載されている記事にも虚偽が含まれるだろうと思います。なぜ奥山氏が記事の内容について反論しないのかナゾです。

掲載内容も独自の先入観に基づくものであり反論する必要性さえ感じられない。

 ↑ここが最大のポイントです。
 奥山氏が、記事には問題があと認識しており、それによって関係方面に迷惑や心配をかけていると認識しているにも関わらず、記事に反論しないのだとしたら、関係者に対してあまりに不誠実なのではないでしょうか。1億円ものカネを出資してくれた仲間たちを、何だと思ってるんでしょう。
 これまで奥山氏からは、オーマイニュースや藤倉に対して一切、抗議は来ていません。ここで紹介しているような内部文書の類でも公式サイト上でも、奥山氏が記事の内容について具体的に間違いも指摘している場面を、ぼくはいちども見たことがありません。奥山氏らの代理人弁護士についても同様です。

 しかも、『純愛』公式サイトでは2007年12月21日付の声明で、名指しこそしていませんが週刊朝日やオーマイニュースに記事について、以下のように言及していました。

結果的に12月18日頃に公表された記事は事実に反する誹謗・中傷に終始しており、私達は甚大な損害を被っています。この記事掲載につきましても、現在、前述の法律事務所と対応を協議しています。

 ↑この一文も、結局ウソだったということなんでしょう。
 なぜなら、今回の6月24日付の文書では、記事の内容について「事実に反する」とする主張が一切ないからです。現在、上記の文言は『純愛』公式サイトから消えています。つまりオーマイニュースの記事に対する見解は、「独自の先入観に基づくもの」という程度の内容に変わっており、記事の内容が「事実に反する誹謗・中傷に終始して」いるとの主張を撤回してしまっています。

 こうして説明内容をころころ変えたりウソをついているのを見ると、この映画をめぐる問題の最大の被害者はやはり出資者たちであるということを、改めて痛感させられます。

 ほかにも奥山氏が出資者に対してウソをついている証拠・証言はあるので、オーマイニュースでのリポートはまだ続けたいと思います。

2008年6月21日 (土)

北川悠仁一族の宗教物語

 今月10日、「ゆず」の北川悠仁の父親・和男氏が死去しました。76歳でした。スポーツ紙・週刊誌で報道されています。
 北川悠仁といえば、ことあるごとに、北川一族が経営する宗教団体「かむながらのみち」や自己啓発セミナー会社「ETLジャパン」についても報道されてきました。ぼくのところに『フライデー』から取材があったのでコメントしました。今週発売された号に掲載されています。

 悠仁は、それほど強烈に教団活動にコミットしたり自ら積極的に広告塔の役割を果たそうとしたりしているようには見えず、「かむながらのみち」については、ことさらに悪質だとか高額なカネをとられたとかいう被害事例が少なくともぼくの耳には入ってきていません。これまで、何度も報道されてきたわりに、宗教の話自体が悠仁の「スキャンダル」になるほどにはいたっていないようです。

 でも同じく北川一族の家業のひとつである「ETLジャパン」は、数十万円の料金を取り、受講生に無償で勧誘活動をさせ、受講生の人間関係などをかきみだす自己啓発セミナーで、90年代からメディアに批判されてきた業界の一部です。「かむながらのみち」は信者をこの悪徳商法に巻き込み、あるいはETL受講生を教団に勧誘するということをしています。
 宗教の方に話題が集まりがちな北川家ですが、こっちの自己啓発セミナー家業の方が問題なのではないかと思います。「かむながらのみち」そのものにはそれほど悪い噂を聞かないにしても、悪徳商法と両輪で運営されている宗教団体であるという点に注意すべきでしょう。

 「かむながらのみち」の公式サイト(いまは消滅しています)には、かつて、教団の教義というか理念として以下の5つを挙げていました。

・仏教
・神道
・算命学
・セミナー(ETLジャパン)
・リーディング

 『フライデー』の取材に対しては、リーディングのことをざっくりと「一種のカウンセリング」なんてコメントしました。もう少し詳しく説明すると、このリーディングというのは、「アカシック・レコード」と呼ばれる宇宙とか人類の過去や未来の記録(どっかにこういうものがもわもわ漂っていることになっています)から、相談者の「本質」だとか「意識」だとか「未来」だとかを読み取って告げる、というものです。「前世リーディング」なんてものもあって、前世まで教えてくれちゃう、なんだかものすごいものです。「かむながらのみち」のリーディングが前世まで教えてくれるのかどうか知りませんが。

 「かむながらのみち」教祖の北川慈敬氏(本名・敬子=悠仁の母)は、もともとARCインターナショナルという自己啓発セミナーの受講生でした。ARCのトレーナーから、リーディングを行う「浅野総合研究所」を勧められてハマったんだそうです。

 同時に、夫・和男氏が宗教団体「解脱会」の幹部で、敬子氏も幹部の妻、という立場でした。解脱会も仏教・神道が混ざった、いわゆる新興宗教です。「かむながらにみち」もその点を引き継いでいると言えます。ただ、算命学・自己啓発セミナー・リーディングを明確に柱として加えている点で、解脱会よりもさらにごちゃ混ぜ感の強い宗教です。
 敬子氏は真言宗醍醐派の総本山である醍醐寺で得度したとしています。解脱会の創設者・岡野聖憲も同じです。実は真如苑という宗教団体の創設者も、醍醐寺で得度しています。敬子氏は、まだ解脱会信者だった1997年、醍醐寺で真如苑の創設者・伊藤真乗夫妻の霊(?)に出会い、「あなたもあなたの霊界をお作りになってください」と、新教団設立をほのめかす「お告げ」を受けたそうです。

 敬子氏は、これとほぼ同じ時期の96年か97年ごろ、初めて「浅野総合研究所」の浅野信氏のリーディングを受けたとしています。ここでも、「そろそろそこ(解脱会)から離脱しても良いときには来ている」というお告げを受けます。
 敬子氏が和男氏とともに解脱会を離れ「かむながらのみち」を設立した宗教上の動機はこういうところにあるようですが、直接の原因は悠仁のスキャンダルでした。

 1999年に、悠仁がかつて『女子高生コンクリート詰め殺人事件』などのビデオ映画に出演していたことがスキャンダルとして報道されました。これが解脱会本部で問題視され、幹部だった和男氏は解脱会を脱会。当然、敬子氏も一緒に脱会します。自己啓発セミナー会社「ETLジャパン」が、ARCインターナショナルの社員やアシスタントを引き連れて独立したのも、この頃です。これは悠仁のスキャンダルの煽りではなく、当時のARC社長が経営不振を理由に解任され別会社を作ることになった動きと連動しています。

 ARCインターナショナルは90年代に入って経営が傾いていたんですが、北川和男氏は100人以上の解脱会信者をARCのセミナーにエンロール(勧誘)し受講させたとの話も、周辺から聞こえています。また、北川家はARCインターナショナルの要請を受け、地方で開催した出張セミナーに解脱会信者を動員し、ARCが地方セミナーの基盤を確立する足がかりにしました。

 北川家が自己啓発セミナーと宗教団体それぞれで、同じ時期に転機を迎えたという偶然は、宗教的な物語にしたくなる気持ちもわからないではありません。それが宗教的な力によるものなのか偶然なのかはわかりませんが、いずれにしても北川家による「宗教と自己啓発セミナー」の抱き合わせは、実は十数年以上にわたる歴史があり、一族の歩みとともに現在の形にいたっていることは確かです。

 その北川家のETLジャパン、これまでぼくがオーマイニュースでしつこく記事にしてきている偽装映画『純愛』が、約1億円の制作資金をかき集めた舞台にもなった自己啓発セミナーでもあります(『純愛』まだやる気かよ参照)。この映画に巻き込まれたEXILEのATSUSHIも、ETLジャパンのセミナーを受講しています。この映画の主演・総指揮の小林桂子氏と、その事実上の夫で自称「配給会社」社長の奥山省吾氏はARCインターナショナルの卒業生で、和男氏の通夜にも来ていました。
 ETLは、実はあまり客が集まっていない弱小セミナーなんですが、ここまで宗教と表裏一体になった自己啓発セミナーは珍しく、いろんな意味で話題にこと欠かない特殊な存在です。

※北川家の歩みについては、『内なる神を求めて ─北川慈敬とかむながらのみち─』(北川慈敬・著、今日の話題社・刊)に詳しく書かれています。

2008年6月10日 (火)

『純愛』まだやる気かよ

 自己啓発セミナー・ARCインターナショナル卒業生の小林桂子・奥山省吾夫妻(法律上は離婚)による偽装映画『純愛』が、札幌(マリオン劇場)と名古屋(シネマスコーレ)で再上映されることが決まったようです。このブログのトップにある「カルトカレンダー」に入れておきました。

 詳しいことは、過去のエントリやオーマイニュースを参考にしていただければと思います。

チャリティー映画『純愛』のウソを暴く!(前編)
チャリティー映画『純愛』のウソを暴く!(後編)
偽装映画『純愛』の札幌公開始まる
『純愛』の小林桂子氏を直撃取材(写真)
『純愛』小林桂子氏に直撃で恐縮です(動画)
釈明も空しい偽装映画『純愛』のいい加減さ
『純愛』が止まらない!!
偽装映画『純愛』、名古屋で公開
偽装映画『純愛』会計の裏事情
私はコレで『純愛』をやめました
『純愛』はとっととやめて(動画)

 「純愛、純愛」と書きまくったので、もう当分、ぼくは純愛できそうにありません。濁った愛でいいです。

2008年1月29日 (火)

カルト映画『純愛』にご注意を

 オーマイニュースで、映画『純愛』(主演・小林桂子氏)について、また記事を書きました。

『純愛』が止まらない!!

 オーマイニュースでは昨年12月以降、上記記事を含めてテキスト記事4本、写真記事1本、動画1本を費やして報じています。上記記事の下の方に表示された「関連記事」「関連TV・Photo」から閲覧できるので、ぜひ読んでいただければと思います。

 『純愛』は、自己啓発セミナーがらみの偽装チャリティー映画です。法人格のない「小林桂子基金」を「NPO法人」だと称し、偽造書類を用いて複数の企業を騙しました。その偽装NPO法人の代表理事を自称していたのも、『純愛』主演の小林桂子氏。NPO偽装以前に、自分主演の映画の収益を、自分が代表理事を務めるNPO法人に寄付すると言っている時点で、ちょっといかがわしさが漂う自作自演なんですけどね。

 『純愛』は一時、EXILEのヴォーカル・ATSUSHIを広告塔にし、ATSUSHIが主題歌を無償提供していました。しかし偽装に気づいたエイベックスやLDH(EXILE所属事務所)が、昨年10月に主題歌を引きあげたため、『純愛』は主題歌部分や宣伝での告知内容を変更せざるを得なくなりました。
 その後、『純愛』製作実行委員長の奥山省吾氏(『純愛』の配給宣伝会社を自称している化粧品・美容関連のプロジェクトデザイン社代表で、小林桂子氏の事実上の夫)らは、エイベックスとのトラブルを隠し、ほかの企業を騙してさらにカネ集めを続け、メディアに宣伝をはたらきかけていました。
 そのことが報道によって暴露されると、NPO法人の偽装は自分たちがやったことではなく、自分たちがNPO法人設立を依頼した第三者による詐欺だという釈明を公開しました。

 それだけでは説明がつかない不自然さや矛盾点も多い釈明でしたが、彼らは、それ以上の具体的な説明もしないまま、今度は札幌で新たなカネ集めを始めています。自己啓発セミナー卒業生らから集めた1億円以上もの出資金や、企業を騙して得た協賛金は、全部使っちまったんだそうです。
 新たなカネ集めの名目は、スイスでの上映会。300~500万円のカネがかかるそうです。といっても、現地でのパーティー代や、小林桂子氏ら関係者の渡航費用なども含めてですが。しかもこれ、オファーの内容から推測するに、興行ではなく試写会っぽい。
 国内での興行でさえ収益を出せていないのに、海外に行くためにカネ集めをしているわけです。スイス上映を彼らに持ちかけているのは、昨年、『純愛』が出品されたモナコ国際映画祭のプロデューサーだとか。

 “第三者による詐欺”は『純愛』関係者にとって、観客や出資者に誠意ある説明をすべき事件であると同時に、自らの無能さ・無防備さを反省すべき事件のはずです。なのに、「今を逃すとチャンスはない」「99%の確立で欧州での配給が決まる」などというプロデューサーの、まるで悪徳商法のセールストークみたいな言葉に飛びつこうとする。しかも他人のカネで。
 これって、彼らが何ら反省していないことの証明ですね。彼らが“第三者による詐欺”を、批判をかわす(あるいは同情を買う)ための単なるキャッチコピーとしか考えていないということです。

 さらにおかしなことがあります。映画の興行や宣伝のために支援者にカネをよこせと言ってトークショーをやって、出演者の一人であるYASUTAKA氏がへたくそな歌まで披露り、「札幌応援団結成式」などというイベントまでやっていながら、『純愛』の上映館には、中国に学校を作るための募金箱とかそういうものが見当たりません。中国に学校を作るチャリティー映画のはずなのに、そんなのはそっちのけ。自分たちにカネよこせという話ばっかりです。

 これまでぼくは、ぼくなりに「取材者」「報道者」という意識でこの問題を取り上げてきたつもりでした。人によっては、「ホントかよ」って思える部分もあるかもしれないけど、いちおうぼくの自覚というか力加減として、そういう線引きをしていました。
 「報道」の目的をぼくは、批判対象を潰すことではなく、世間の目に晒すことで実態相応の評価を受けるようにするとか、彼ら自身がメディアや世間の反応を参考にしてやり方を改めることを期待するとか、そういう部分に置いています。

 でも正直、もうキレました。もちろん報道者としての倫理観とか正義感とかもあるけど、もはやぼくの感情レベルで許せなくなってきています。

 取材した感触としては、彼らは厳密な意味での詐欺師ではなく、たぶん無能で世間知らずのお調子者という気がします。
 騙す意図がなければ詐欺罪は成立しないかもしれません。でも、理をわきまえず暴走すれば、たとえ悪意がなくても立派な害悪です。

 オーマイニュースをはじめニュース媒体で記事を書く際には、今後も「報道」としてこの問題を書いていこうと思います。でもこのブログでは今後、『純愛』の撲滅を目指して情報を掲載していこうと思います。
 まあ、別に撲滅できるようなプランを持ってるわけでもないですが、なんか、そのくらいの気合いで取り組まないと彼らの暴走に一矢報いることすらできない気がしてきました。彼らも、彼らの周囲の「信者」たちも、報道されたくらいじゃ事実を見ようともしないし、立ち止まって考えようともしないんだもん。

 とりあえずみなさん、映画『純愛』を見かけたら近寄らないように注意してもらえればと思います。間違っても、おカネを出したり手伝ったりしない方がいいと思います。いま『純愛』に協力している人たちも、他人を巻き込むことで自分が加害者になるんだということを少しは自覚してほしいです。

 『純愛』プロジェクトは、自らが標榜した「チャリティー」と矛盾した活動をすることも、他人に迷惑をかけることも、なんとも思わずにやってのけるカルト的集団です。営利目的でも悪意でもなく、思い込みで間違った方向に暴走している点なんか、狂信的宗教集団にすら似ています。
 mixiの『純愛』コミュニティにオーマイニュースの記事のURLが投稿されたら、管理人の奥山省吾氏が削除していました。「情報操作」というほど大それたことでもないですが、「信者」に情報を与えないように努力していることは間違いないようです。

 自己啓発セミナーをカルト的な集団と捉える人はいます。『純愛』は、自己啓発セミナーがらみの映画です。しかしそのことが『純愛』をカルト的と評する根拠ではありません。
 非常識な手段で、ときにはウソをもつきながら人を集めカネを集める『純愛』関係者の集団は、それ自体が単独でカルト的性格を発揮していると思います。下手したら、小林桂子氏の出身セミナーであるARCインターナショナルや、『純愛』の製作資金集めの草刈場となったETLジャパン以上に、『純愛』プロジェクトの方がカルト的かもしれません。
 『純愛』がセミナー受講生にたかった製作資金は「1口100万円」。ARCやETLのセミナーだって、3段階全て受講しても30~40万円です。「金額=カルト度」というわけでもないですが。

 というわけで『純愛』は、一般的な意味とは違う意味で「カルト映画」です。
 しかし同時に、本来の意味での「カルト映画」とも言えるかもしれません。1億円も費やしたわりには見事なまでに出来が悪い映画だからです。

 ゲテモノ観たさで劇場に運ぶという人がもしいるなら、止めはしません。イケてなさも非常に中途半端な映画なので、その気持ち悪さを楽しめて、なおかつ劇場の観客たちの大げさなすすり泣きすらも笑って見ていられるような、そんなコアな人におススメです。わかりやすいトンデモ映画が好きな人には、少々キツイと思います。

2007年12月29日 (土)

映画『純愛』公式サイトのウソを暴く!

 オーマイニュースの「チャリティー映画『純愛』のウソを暴く!」(前編後編)で、『純愛』関係者が収益の寄付先としていたNPO法人が実際には存在せず、彼らがATSUSHI(EXILE)の所属レコード会社や所属事務所、映画興行の協賛企業に対して、NPO法人に関する偽造書類を提示していたことを書きました。

 その後『純愛』側は、公式サイトで「自分たちも第三者に騙された」という趣旨の主張を掲載しています。

 せっかくなので、彼らの公式サイトのウソも暴いちゃおうと思います。公式サイトの文面を引用した部分の末尾に赤字で日付をつけますが、これは、藤倉がこのサイトのデータを保存した日付です。

<新エンドロールについて>
銀座シネパトス公開時に使用させていただいていたエンドロール主題歌は、07年10月末をもって使用許諾期間を終えることとなりました。
(2007.12.21)

 これがもっとも悪質なウソです。『純愛』関係者はこれまで、これと同様の虚偽の説明を協賛企業や一部マスコミに対して行なってきました。その後、この部分は、こういう記述に変わっています。

主題歌をご提供いただいておりましたレコード会社様,及び主題歌を歌っていただいていたご本人の所属事務所様からは、主題歌使用中止のお申入れをいただきました。
(2007.12.29)

 事実上、虚偽の説明であったことを自ら認めたようなものです。

 しかし、ことの経緯については明らかに誤った説明が書かれていました。

2007年12月17日、上記経緯は、すべて当基金会がNPO法人化の手続きを依頼していた第三者による巧妙に偽装された詐欺行為であったことが判明し、当基金会は偽装されたNPO法人の認証を受け取っていたことが明らかになりました。
(略)
こうした状況の中、一部の週刊誌ほかから、明らかに事実に反する視点からの取材申込みを受けたため、私達としては取材拒否の姿勢を貫いて参りました。
(略)
この一件により主題歌をご提供いただいておりましたレコード会社様,及び主題歌を歌っていただいていたご本人の所属事務所様からは、主題歌使用中止のお申入れをいただきました。
(2007.12.24)

 これ、事実関係の順序が全く逆です。
 実際の順序は、こうです。

(1) レコード会社と所属事務所が書類の偽造に気づいて主題歌の使用中止を申し入れた(2007年10月頃)
(2) 「一部の週刊誌ほか(週刊朝日とオーマイニュースと思われる)」が『純愛』関係者・支援者らに取材を申し入れた(2007年12月上旬)
(3) その取材によって事実を知った支援者が『純愛』側に説明を求めた(2007年12月14日以降)
(4) 『純愛』側が、書類が偽造だったことを認め、「自分たちが詐欺にあった」と主張し始めた(2007年12月17日)
(5) 週刊朝日発売(2007年12月17日)、オーマイニュースが記事を掲載(2007年12月17・18日)

 12月25日に『純愛』サイトは、上記で引用した「この一件により」という、因果関係を断言する表現を消して、経緯を曖昧にしましたが、説明の順序は相変わらず事実と逆になっていました。
 事情を知らない人が読んだら、『純愛』側が自ら「詐欺」を発見し、その後に雑誌の取材や所属事務所からの「主題化使用中止」の通告を受けたかのように勘違いしかねません。表現を修正してもなお、そのような記述にしているということは、『純愛』側が意図的に読み手の勘違いを期待していると受け取られても文句は言えないでしょう。

 この点について、12月29日に更新された『純愛』サイトでは、こういう記述が加わりました。

また、この事件発覚のきっかけは、レコード会社様からの問合せをいただいたことであり、重ねて御礼申し上げます。
(2007.12.29)

 ウソをついては、ちょっとずつ、ちょっとずつ、サイトの文章を書き換えてつじつまを合わせていく。でも、そのことで、かえって「ウソ」を自ら認めることになっています。

 さて、メディアの取材に関する説明も、デタラメだらけ。

こうした状況の中、一部の週刊誌ほかから、明らかに事実に反する視点からの取材申込みを受けたため、私達としては取材拒否の姿勢を貫いて参りました。結果的に12月18日頃に公表された記事は事実に反する誹謗・中傷に終始しており、私達は甚大な損害を被っています。
(2007.12.29)

 ぼくは、12月6日以前から取材を申し入れており、『純愛』広報窓口である市川慶子氏が、映画祭のためモナコに行っている製作実行委員長の奥山省吾氏にメールで連絡しておくと答えました。しかし実際には連絡を取っていませんでした。

 奥山氏が帰国後、ぼくが奥山氏本人に電話をして確認したところ、市川氏が彼にメールでの連絡をしていないことがわかり、奥山氏に取材の申し入れをしました。奥山氏からは、「個人的には、取材を受けてきちんと説明したい」と言われました。しかし12月14日、一転して、「取材は一切受けない」と市川慶子氏から電話連絡が入りました。

 このことからわかるように、実際には『純愛』側は「取材拒否の姿勢を貫いて」などいません。彼らは、取材対応についてどっちつかずの態度をとりながら、だらだらと1週間以上も返答を延ばしてきました。

 また、『純愛』サイトでは、「一部の週刊誌ほかから、明らかに事実に反する視点からの取材申込みを受けた」と書いてありますが、これもウソです。週刊朝日がどのような申し入れをしたのかは知りませんが、ぼくは取材申し入れの際、「NPO法人が存在しない件」と「お金の流れ」について聞きたいという程度の説明しかしていません。
 NPO法人が存在しないのは事実だし、「お金の流れ」は単なる質問であって、こちらから何か具体的な事実を彼らに提示したこともありません。

 彼らは「12月18日頃に公表された記事は事実に反する誹謗・中傷に終始しており、私達は甚大な損害を被って」いるそうなんですが、週刊朝日やオーマイニュースの記事のどこがどう「事実に反する誹謗・中傷」なのかは、一切明らかにされていません。もちろん、オーマイニュースでぼくは、証拠・証言に基づいたことしか書いていません。
 それより何より、週刊朝日は知りませんが、オーマイニュースにもぼく個人にも、彼らから何の抗議も来ていないんです。
 まあ、年末年始を挟んでしまっているので、年が明けてから届くんでしょうか。それとも、メディアの取材に関する彼らの説明も、今後ちょっとずつ書き換えられていくんでしょうか。
 いつまでもウソを垂れ流したままのようなら、オーマイニュースやぼくの名誉に関わる問題です。ぼくも「弁護士に相談して対応を協議しちゃってみようかなあ」とか考え始めるかもしれません。

 あと、これはウソではなく、おそらく『純愛』関係者がものごとの道理を理解していないことから生じた誤りではないかと思うんですが、こういう記述がありました。

<幼稚園建設費用について>
2007年8・9月の銀座シネパトスでの初公開は大成功のうちに終了することができました。そして、その興行収益の10%の約120万円を中国泰安市の希望小学校内に作る予定の幼稚園建設費用として保管させていただいています。
(2007.12.21)

 なんと、東京興行では、1,200万円もの収益があったということになります。
 『純愛』の東京公開の観客動員数は6,266人です。1人分のチケット代が1,800円だとすると、約1127万円の売上げがあったことになります。
 この数字を比べると、『純愛』サイトに掲載された「収益」というのは、正確には「売上げ」のことでしょう。

 この間違いに気づいたのか、何か別の事情があったのかはわかりませんが、現在の『純愛』サイトからは、この記述が消えています。

 もうひとつの誤りは、「文書偽造」「詐欺」がわかったと主張し始めた後の、この記述。

今後については、

① 刑事告訴、告発の届出、犯人逮捕、事件解決
② 関連する皆さまへのご説明
③ 小林桂子基金会のNPO法人認証の準備
 (名称を「純愛基金」と変更する予定です。)
④ 事業全体の運営体制の刷新・強化

を、順を追って、具体的に進めてまいります。
(2007.12.22)

 刑事告訴の後、犯人が逮捕され事件が解決してから関係者に説明するとは、いったい何年かかるのか。そもそも、警察が告訴状を受理するかどうかもわからない。騙されて周りに迷惑をかけたと言っている割には、ずいぶんと悠長な人たちだなあと思いました。
 さすがにこれも誤りに気づいたのか、現在では、こういう記述に変わっています。

今後については、
① 刑事告訴、告発の届出
② 関係者の皆さまへのご説明
③ 小林桂子基金会のNPO法人認証の準備 (名称を「純愛基金」と変更する予定です。)
④ 事業全体の運営体制の刷新・強化                    
を順を追って、具体的に進めてまいります。
(2007.12.29)

 なお、12月29日の『純愛』サイトの更新では、これまで末尾に、

小林桂子 映画「純愛」製作総指揮・小林桂子基金会理事長
奥山省吾 映画「純愛」製作実行委員長・小林桂子基金会理事

 とあった部分が、

小林桂子 映画「純愛」製作総指揮・小林桂子基金会理事長
市川慶子 映画「純愛」製作担当・小林桂子基金会理事
奥山省吾 映画「純愛」製作実行委員長・小林桂子基金会理事

 に変わりました。1人増えてます。
 新たに「理事」として登場した市川慶子氏は、『純愛』の広報窓口を勤めている女性で、「代官山サロン」というエステサロンを経営しています。「代官山サロン」には小林桂子氏も関わっているようです。

 市川慶子氏は、『純愛』の配給・宣伝会社ということになっている株式会社プロジェクトデザイン(代表・奥山省吾氏)の監査役であり、小林桂子氏とともに有限会社ケイズカンパニーの取締役も務めています。小林桂子氏は、プロジェクトデザイン社の取締役でもあります。
 株式会社プロジェクトデザインは、もともと映画配給会社ではなく、化粧品や美容関連のイベント企画やサロン経営、コンサルティングをメインとした会社のようです。

 要するに、

・株式会社プロジェクトデザイン
・有限会社ケイズカンパニー
・小林桂子基金

 の3団体は、ぜんぶ同じ人たちがやっているものだということですね。そういった関係が明示されないまま、これまで『純愛』関連情報として雑誌やインターネットで宣伝されてきましたが。支援者や協賛企業は、この事実を知っているのでしょうか。

 ちなみに、小林桂子・奥山省吾氏は、法律上はすでに離婚しているようですが、現在も事実婚状態であるとの証言があります。

2007年12月18日 (火)

チャリティー映画『純愛』のウソを暴く!

 オーマイニュースで、自己啓発セミナー関連記事を2本書きました。

チャリティー映画『純愛』のウソを暴く!(前編)
チャリティー映画『純愛』のウソを暴く!(後編)

 ARCインターナショナルの卒業生でETLジャパンのボランティアスタッフの小林桂子氏らが、小林氏自らが主演するチャリティ映画『純愛』で、架空のNPO法人を名乗ったチャリティ活動を行い、どうやら人気グループ「EXILE」の所属事務所やレコード会社、さらには映画興行の協賛企業を騙していたっぽい証言がボロボロ出てきています。

 この映画企画については、藤倉が運営する「自己啓発セミナー対策ガイド」内で、過去にこういう記事も書いています。当時は『純愛』ではなく『ウォーアイニー』という中国語タイトルでした。

小林桂子映画、クランクイン決定(2004/04/29)
小林桂子・映画企画 3ヶ月で7,000万円のカネ集め(2003/10/07)

 この映画に関連するARC・ETL2社に関する、同じく「自己啓発セミナー対策ガイド」内の基礎情報はこちら↓。

ARCインターナショナル
ETLジャパン

 ご存知の方もけっこういると思いますが、ETLジャパンは、人気デュオ「ゆず」の北川悠仁の親族が実質的に経営する自己啓発セミナー会社です。関係者の話によれば、ETL内では、悠仁の母親が教祖となっている宗教団体「かむながらのみち」への勧誘活動も行なわれているそうです(まあ、そんなにしつこい勧誘ではないようですが)。ATSUSHIが、宗教にまで関わったかどうかまでは、わかりません。

 今回の映画『純愛』をめぐっては、ARC卒業生やETL受講生・卒業生の間で小林氏らが製作資金の出資を募っていました。関係者の証言によれば、映画の“広告塔”にされていたEXILEのATSUSHIも、小林桂子氏の勧誘によってETLのセミナーを受講したそうです。

 というわけで、『純愛』騒動はもろに自己啓発セミナーを舞台に繰り広げられたものと言っていいわけですが、正確には、自己啓発セミナーそのものが何か悪いことをしたというのとも違います。直接問題を起こしているのは、卒業生あるいはボランティアスタッフである小林桂子氏と夫の奥山省吾氏など、映画の制作方面の関係者です。

 しかし、「無計画で非常識(そしてときにはただの自己満足な)なチャリティ活動はスピリチュアル系の人々のお家芸なのか?」言いたくなるような出来事がいろいろある昨今、この『純愛』騒動が自己啓発セミナーを舞台に繰り広げられたことは、必ずしも偶然ではないような気もします。

 ETLジャパンは小林桂子氏の資金集めに利用された被害者、との見方もできなくはありません。しかし実際には、ETLジャパンは小林氏のカネ集めを知っていて放置あるいは容認していたように見えます。トレーナーの北川大介氏までもが『純愛』の試写を観に行っていたし、小林氏が資金集めをしていた2003年ごろ、ETL社内には小林氏のブロマイドというかプロフィール写真のようなものも飾ってありました。
 なんでぼくがそんなことを知っているのかは、もちろんナイショです。

 ETLが自社の受講生に対して小林氏がカネ集めをするのを容認した理由について、

「ARC時代に芸能人をセミナーに勧誘してきたこともある小林氏の実績を、元ARC社員だったETL幹部やスタッフも当然知っており、小林氏はETLにも受講生を勧誘してきてくれていたからではないか」

 とする関係者もいます。実際、小林氏はEXILEのATSUSHIをETLに勧誘し、ATSUSHIはETLの創立10周年パーティーにも出席しました。こうしたウワサは受講生の間で広まるもので、「受講生の個人情報は口外無用」のはずのETL内において、ATSUSHIと同期生ではない受講生までもがATSUSHIの受講について知っているという状態になっていました。
 有名人も受講しているということが、ETLにとってマイナスになるわけがありません。もともと、「ゆず」の北川悠仁が経営者の一族であることが週刊誌沙汰になる以前は、ETL幹部がweb上の日記などで「弟」の話をしたり、社内に北川悠仁関連の写真を張り出すなどして、むしろ積極的に「利用」していました。

 ETLはぼくの取材を拒否しましたが、こうした諸々を考えると、ETLと『純愛』との間には、(計画的ではなさそうですが)結果として「ギブ・アンド・テイク」が成り立っていたように思えます。
 もちろん、セミナー会社にしてみれば卒業生の「慈善活動」を邪魔だてする理由はないでしょうし、もともとボランティア活動などがセミナー卒業生のサークル活動的なノリで行なわれるということは、自己啓発セミナー業界では珍しくありません。『純愛』の資金集めの段階で、一般の問合せ窓口にもなっていた「ワンワールド・ワンピープル(OWOP)協会」も、かつてはARC内部でそういう機能を持っていた団体としてスタートしたものです。

 だからといって、関係者を騙した『純愛』の行為についてETLに責任があるとは思いませんが、やはりこれは「自己啓発セミナー」関連の騒動と言って差し支えないだろう、くらいには考えています。

2007年5月26日 (土)

最近書いた宗教関連記事

 最近、忙しくてさっぱりブログ更新してませんでしたが、最近の宗教・カルト関連のお仕事報告です。

Photo◇2007年4月発売/晋遊舎/.net実話 アングラーEX vol.6/「新興宗教お宝鑑定隊」、「スピリチュアの現場」(スピリチュアル・コンベンション)

 

 『.net実話アングラーEXVol.06』で、「新興宗教お宝鑑定隊」と「スピリチュアルの現場」の2本の記事を書きました。

 「新興宗教お宝鑑定隊」は、統一教会や法の華三法行などのカルト宗教が信者に売りつけている高額グッズを、古物商に鑑定してもらうという記事です。信者がウン千万円で買わされたグッズでも、古物商の評価額が「ウン千円」とか「ゼロ円」とか。笑うしかないくらいのビックリな価格差は、そのまま教団のあくどさを示してますね。
 各教団の被害者が起こしている裁判などで、グッズのインチキぶりが暴露されているケースはあります。でも複数の教団の計20点以上のグッズをいちどに鑑定するなんてアホな企画は、さすがに本邦初なんじゃないかと勝手に思っていますが、実際どうなんでしょうね。
 とりあえず、資料価値もそこそこあるのではないかと。「カルト宗教美術年鑑」みたいな感覚で使えるかも(?)。

 「スピリチュアルの現場」は、連載2回目。1回目は X Japan の TOSHI がハマってる自己啓発セミナーを取り上げましたが、今回は「スピリチュアルコンベンション(通称すぴこん)」です。ぼくが助手(?)をつれて、東京会場に行き、あれこれ体験してきました。単なる体験レポートではなく、恐ろしいほどの短期間で「毎週日本のどこかで開催されている」(事務局関係者)ほどになるまでの増殖過程がわかるような表もつけてみました。

Photo_1◇2007年5月発売/晋遊舎/.net実話コミックアングラー Vol.01/「あるインチキセミナーの手口と対策」、「宗教団体と戦い続ける街」(オウム、創価学会、神慈秀明会、真如苑)

 

 『アングラー』の姉妹誌として、今月『コミックアングラー』も創刊されます。創刊号で、ぼくは、女子学生ばかりを狙った自己啓発セミナーをテーマにしたマンガ「あるインチキセミナーの手口と対策」の原案を書きました。この自己啓発セミナーは、ぼくが運営する「自己啓発セミナー対策ガイド」の掲示板でもよく話題になっている会社です。その会社の勧誘手法と対策法(ちょっとおちゃらけ)を解説するマンガです。
 同じく『コミックアングラー』創刊号の活字ページで、「宗教団体と戦い続ける街」というレポートも書きました。オウム(アーレフ・ひかりの輪)、創価学会、神慈秀明会、真如苑といった教団と、それらの進出に反対する近隣住民との対立をレポート。
 写真ルポに近いページ構成で、あまり文章を書けませんでした。詳細はほかのところで引き続きレポートしていきたいというのが正直なところだったりします。

Omn◇2007年5月17日掲載/オーマイニュース/「上祐派独立・地域住民の不安と賠償問題」「“2つのオウム”に悩む東京・世田谷」

 オウムに関しては、「オーマイニュース」で、「上祐派独立・地域住民の不安と賠償問題」という記事を書きました。住民デモや「ひかりの輪」副代表の講演のレポートです。住民デモの動画レポート「“2つのオウム”に悩む東京・世田谷」もついてます。

2006年5月31日 (水)

自己啓発セミナーの多様化をめぐるあれこれ

 グループ・ダイナミックス学会で自己啓発セミナーのシンポで、「自己啓発セミナーの語られかた~集団内の自律と他律をめぐって」という論文をちょっと批判しました。その批判ポイントを具体的に書いておきます。
 気になったのは、論文のこの辺です。

旧来のスタンダードなセミナーは大方姿を消し、目立つのはセミナーの目的を「成長」という抽象的な言葉ではなく、より実利的なものに絞ったものである。たとえばそれは、「企業の活性化」であり、就職を控えた学生に対象を絞り込んだ「就職セミナー」などによる「自己分析」である[小池 2003:25]。イベント実施やCD作成といったものもある[小久保2003a:8]。

 「就職を控えた学生に対象を絞り込んだ「就職セミナー」などによる「自己分析」である[小池 2003:25]」は、メディオスの実態から考えれば間違いです。就職を控えた学生が主対象なら、未成年の大学生がサラ金送りにされまくるわけがありません。また、メディオスは「就職セミナー」という謳い文句からして目的な具体的であるかのように見えますが、就職活動のためのスキルアップをセミナー・プログラムに盛り込んでいたわけでもなく、中身は「抽象的」な従来の自己啓発セミナーと同じです。
 「イベント実施やCD作成といったものもある[小久保2003a:8]」とありますが、それもメディオスのことでしょう。いまはやっていないようですが、メディオスのイベントやCD制作は、それぞれ新規受講生勧誘の手段であったり、卒業生向けのより高額なオプションコースでした。メインである自己啓発セミナーのプログラムには影響を与えていません。
 「語られ方」を考察するという論文の趣旨からすれば、実際のセミナー内容が具体的な結果につながるものであるかどうかではなく、目標として掲げるものが具体的であるかどうかが議論のポイントなのだと思います。しかし、メディオスの掲げる目標は単なる勧誘文句(しかもウソ)でしかないんですよね。
 以前はぼくも「目的が具体化」という捉え方はしていました。この論文の先行研究をしていた小池靖氏とも、かつてそんな会話を交わしていた記憶があります。それを考えると、気分的にはあんまり声高に「間違ってる!」とか言いにくいかも。触れている情報が古いか新しいかという差でしかないですね。ライターにとってはそれは重大なことですが、学者の時間感覚はライターとは違うっぽいし。

 メディオスに比べれば、日本創造教育研究所は、まだ「具体的」と言えるのかもしれません。いちおう具体的なスキルアップを謳って自己啓発セミナー以外の研修もやっているからです。
 でもその日創研でさえ、経営者を抱え込むための導入部であり会社の主要事業となっているのは、従来型の自己啓発セミナーのプログラム。たとえば「企業の活性化のためには、Win Win の精神が必要です」とか言って赤黒ゲームをやったって、「あなたが部下にどう見られているか考えてみてください」とか言いながらネガティブフィードバックで罵倒したって、しょせんは抽象的な精神論です。田舞代表が発行しているメルマガみたいのを読んでも、松下幸之助とかの言葉を引用した精神論で「頑張りましょう(ていうか日創研の研修受けましょう)」とか言ってるだけだったりします。
 顧客獲得のための「謳い文句」を議論の前提としてどこまで汲み取っていいものか、微妙なところですね。

 この論文に情報としての社会的価値があるとしたら、業界の多様化を改めて記述している点でしょうか。コーチングやNLPにシフトしたセミナー会社は多いので、「ビジネス・ツール」というパッケージがトレンドになって業態が多様化していることは間違いありません。
 現存するセミナーで、従来型の自己啓発セミナーをやめたという話を聞かないのは、いまさっと思いつくところではメディオス(シフトプレイス)、日創研、ASK、ETL、ウィキャン、オールウェイズ、春日言語塾、アチーブメント、ランドマーク・エデュケーションくらい。ここ10年で、従来型のセミナーどころか会社そのものがなくなっちゃったケースも多いとはいえ、かなり少数派になりつつあります。
 上記の論文は、個別の団体に関する情報が多少アバウトでありながらも、こうした業界の全体像は的確に捉えていたと思います。

 この論文でも触れられていますが、セミナー団体の業態だけではなく、「自己啓発セミナー」という言葉の捉え方もまた多様化しています。いまや「自己啓発セミナーといえばライフ・ダイナミックス」という時代でもないし、かつてのそういう時代のことなんか知らない人々が「自己啓発セミナー」という言葉を使います。それがもはやネガティブな響きだと思わない人もいるようで、自ら「自己啓発セミナー」と称してビジネスセミナーらしきものを開催しているケースもあるようです。書籍の世界では「自己啓発本」が売れまくってるみたいだし。
 ぼくが運営する「自己啓発セミナー対策ガイド」では、「ライフスプリングとestの系譜」という意味での自己啓発セミナーには含まれない、さまざまなビジネスセミナーや能力開発のイベント、セラピーなどについて相談や情報提供が寄せられます。程度の差こそあれ、相談者がそれらをある程度「自己啓発セミナー」という枠で捉えているからこそ、「自己啓発セミナー対策ガイド」というタイトルのサイトを見つけ出して相談を寄せるんでしょう。
 学問上の意義とは全く別の話になっちゃいますが、「自己啓発セミナー」を従来以上に広く捉えていかないと、社会問題としての自己啓発セミナーについて充分に語れなくなってきているなあと、最近ことあるごとに感じます。

グループ・ダイナミックス学会で自己啓発セミナーのシンポ

 グループ・ダイナミックス学会で自己啓発セミナーに関するシンポジウムが開かれるというので、行ってきました。
 反カルト運動に関わる研究者や「正統派」の心理学研究者・実践者などが発表者・討論者として登場しましたが、自己啓発セミナーについてレポートした小久保温氏は物理学が専門で、心理学等の研究者ではありません。討論者の西田公昭氏は、自己啓発セミナーも含めた「カルト」の心理操作テクニックを「マインドコントロール」であると主張する社会心理学者ですが、自己啓発セミナーのことを直接知っているわけではありません(今回のシンポでご自身が認めていた)。
 要するに、自己啓発セミナーを研究している心理学者は皆無らしいんですが、今回のシンポジウムでは、研究どころか自己啓発セミナーに関する基本的な情報や議論すら心理学者の間では交わされていなかったらしいことがわかりました。そんな中で自己啓発セミナーをテーマにしたシンポジウムが開かれたのは、かなり実験的というか挑戦的というか、とても貴重な企画だったのではないかと思います。

 自己啓発セミナーに関する発表内容は、小久保氏「自己啓発セミナーに関する情報」を見ればだいたいわかるので割愛します。
 心理学者サイドからの感想や議論を聞いていると、みなさん自己啓発セミナーを心理学業界の「異端」と捉え「正統派」とは「似て非なるもの」とするスタンスながら、自己啓発セミナーを「正統派」と区別する明確な基準をもっていない(ぶっちゃけ、中身を見てみないとわからない)という点で一致していたように思います。セミナー会社や関連団体、自己啓発セミナーの影響を強く受けたセラピストのチラシやHPの記述を見ただけでは、専門家でも「正統派」との区別はつかないようです。
 しかし非構成式Tグループを開催している南山大学の中村和彦氏は、自己啓発セミナーと「正統派」Tグループの違いをこう指摘していました。
「Tグループでは、最終的に何らかの事後ケア、フォローを要することはあっても、結論を出すために参加者を操作することはしていない。グループが(議論等々を)未消化のまま終わることも多々ある」
 自己啓発セミナーは、人数や参加者の傾向と無関係に常に同じ結末に導き勧誘活動に向かわせます。勧誘活動以前の第1・2段階でも、初日から最終日までのストーリーも個々の実習項目も最初から決まっていて、参加者に求められる「望ましい結末」も常に同じです。

 正統・異端の境界線あたりに話が及ぶと区別は非常にややこしいんですが、典型的な自己啓発セミナーに関しては比較的語りやすいのではないかと思いました。自己啓発セミナーに詳しくない心理学者ばかりのシンポジウムだったのに、具体的情報に触れた瞬間に違いを指摘できたわけなので。
 同時にシンポジウムでは、自己啓発セミナーと自分たちのセラピーが外見的には区別しにくいことを懸念する声もありました。でも、中身をちゃんと検証すれば区別が不可能というほどではないんだから、ぜひとも心理学者に自己啓発セミナーを研究してもらいたいもんだと思いました。両者を区別できる情報があるなら、「正統派」業界の利益にもなるし、セラピーのユーザーがセラピーを選択する上でも参考になります。
 正統とか異端とかって考え方(というか表現)は権威主義っぽいので、ぼくは大嫌いです。でも、具体的根拠をもって正統・異端を語れるのであれば、世の中のメリットとしては歓迎すべきことなのかもしれません。宗教上の正統・異端論と違い、具体的根拠を挙げた上での手法・倫理に関する正統・異端論なら、非科学的な神学論争になる危険性も低いでしょう。

 自己啓発セミナーに関する研究はこれまで、宗教社会学の分野で行われるケースがほとんどでした。奇しくも最近、「自己啓発セミナーの語られかた~集団内の自律と他律をめぐって」という修士論文がネット上で公開されています。これも社会学系の論文っぽいです。
 「自己啓発セミナーの語られ方」の分析はとても面白いし、自己啓発セミナー業界が多様化し輪郭がぼんやりしてきているという見方も的を得ています。一方で、セミナー団体やその団体のカリキュラムに関する情報は、ちょっと危うい内容です。団体情報をダイジェストにしちゃった宗教社会学等の論文を引用しながら、個別の団体についてさらにダイジェストで語っているので、引用元の論文以上に情報がアバウトな部分があります。
 団体情報がアバウトなら、学者村の作法にのっとった議論としては成り立っても、情報の社会的価値はいまいちです。

 仮に心理学者が「正統と異端はこう違うんだ!」みたいな論文を書ことうしたら、自己啓発セミナーの具体的カリキュラムを検証しないわけにはいかないから、その部分の情報がアバウトになることは考えにくい。やっぱり、社会的なメリットを期待できるのは社会学より心理学なのかな、という気がしてきます。西田公昭氏の著書『マインド・コントロールとは何か』は少数のサンプルを元に不用意に広範囲に一般化してしまった点が難点ですが、その轍さえ踏まなければ大丈夫なのではないかと思います。
 でもまあ、そもそも心理学者が自己啓発セミナーを研究してくれるのかどうか、ってのが大きな問題のようです。「原則リベラリズム(櫻井義秀氏『「カルト」を問い直す』参照)」という“大人の事情”で、自己啓発セミナーみたいなものを研究テーマにしにくい構造が心理学研究者の間にはあるとか。それでも、グループ・ダイナミックス学会のシンポジウムを後にする際、関係者に「ぜひ、社会心理学者に自己啓発セミナーを研究してほしい」と言って帰ってきました。
 実は、上記の論文を読んだのは帰宅後なんですけどね。

2006年5月 8日 (月)

ロバート・ホワイト氏基調講演会

White01_1   5月6日、浅草ビューホテルで行われた、ASKグローバルコミュニケーション株式会社主催「ロバート・ホワイト氏基調講演会」に行ってきました。ASKは、ARCインターナショナル社の元トレーナーである松田友一氏が2002年に設立したばかりのセミナー会社です。

 講演会資料にあった、ホワイト氏のプロフィールの抜粋です。

 自己成長のセミナーの草分けであるマインドダイナミックスの社長を務め、ライフ・スプリング社の創設者であり社長。
 ARCインターナショナルの創設者で、1978-2001まで会長を努め、アジア、南米、ヨーロッパ、北米で企業や個人のクライアントと緊密に関わる。

Arc ARCインターナショナルは旧社名をライフ・ダイナミックスといい、日本で初めて設立された自己啓発セミナー会社です。80年代には、このARCを模倣したセミナーが乱立し、一説によるとピーク時にはその数100社とも200社とも言われています。本当にそんなにたくさんあったかは疑問ですが(何せ、実際に数えたという人はいないので)、現在でも30社くらいが生き残っています。「200社」とはいかないまでも、ピーク時にはかなりの数のセミナー会社があったことは間違いありません。
 ARCの日本法人は2000年に解散し、アメリカに本部を置いていたARCグループもほぼ近い時期に全て閉鎖されました。もともとホワイト氏が設立した「ワンワールド・ワンピープル協会」というボランティア団体は、NPOとして現存しています。
 講演会資料にはありませんでしたが、ホワイト氏はホリディ・マジックという化粧品マルチ商法の会社でディストリビューター教育のための研修を請け負っており、ARC設立以前から香港や日本での研修も担当していました。ARC設立時のスタッフや受講生には、このホリディ・マジック人脈が反映されていた面もあると言われています。
 このように、自己啓発セミナーをめぐるさまざまな歴史に立ち会ってきた生き証人がロバート・ホワイト氏です。

 今回のイベントの内容は、講演会というよりASKのゲスト・イベントに近いものでした。ASKのサイトにも、ホワイト氏がトレーナーを務めた4月30日~5月2日のASKの Extraordinary Leadership コースの受講生の声として、こんな内容のものが掲載されていました。

5/6基調講演会にひとりでも多くの人をエンロールしていきましょうp(^-^)q
そしてひとりでも多くの人をベーシックにエンロールしていきましょうね♪

 とは言え、配布資料にセミナーの案内があり講演後に司会者から簡単にアナウンスされただけ。会場全体でセミナーを強く勧める場面はありませんでした。受講生に誘われてきた来場者が「紹介者」から個々にどういう勧誘を受けたかは、わかりません。

 講演では、ホワイト氏はただ喋るだけではなく、2つほど「ゲーム」を織り交ぜていました。ひとつは、

①自分が好きな映画
②その登場人物
③映画の中で起こっていた「問題(登場人物が直面していた困難とか)」

 をメモ用紙に書くというもの。さらに、

④主人公がなぜその問題を解決できたのか
⑤なぜ自分がその映画を選んだのか

 も書いて、会場の人と2人で組んでインタビューをしあいます。とくにダイアードの形態(こちらを参照)でインタビューしろと言われたわけでもなかったので、気楽なお喋り程度のノリでした。ほかの参加者のことを書くのは控えて、とりあえずぼく自身を例にします。

Taiyo①映画/「太陽を盗んだ男
②登場人物/刑事役の菅原文太(自作の原爆で警察を脅迫する沢田研二を追う役)
③問題/命がけで追っかけても沢田研二を捕まえられないこと
④解決できた理由/東京で原爆は炸裂するわ文太は死んじゃうわで、解決しなかった
⑤選んだ理由/途中、ヘリから飛び降りても沢田研二に撃たれても死なないでいた菅原文太が感動的だったから

 ネタじゃありません。素で書きました。どういうゲームか告げられずに①~⑤を書かされたので。このゲームに続いて出てきたのは、こんな講話でした。

「自分以外のものが作り出す現実というものはなく、誰もが自分の現実を自分で作り出している」
「自分が見た映画とは、すなわち自分が作った映画である。あなた自身の投影である」
「映画だけではなく、あなたが聴く音楽も、あなたの周囲の人々もビルも、全て皆さんが体験を通して印象を作り上げている」

 銃で撃たれても死ねずに、でも結局は目的を果たせず死んじゃうのがぼくの現実か・・・。ペアでの発表以外に全体発表をした人もいましたが、みんなはもっと建設的な映画を挙げていました。当たり前ですが、「事実」という意味での現実ではなく、その人の人間性・美学・人生観が垣間見えるというくらいの意味に受け取っておいた方がよさそう。

 ちょっと驚いたのは、2つめのゲーム。やはりペアになって「秘密の告白」です。さすがにこの内容は、他人のこともぼくのことも秘密です。
 ホワイト氏もゲーム前にまず「自分の秘密」をひとつ語っていました。会場では、自分だけの秘密ではなく家族にまつわる秘密を語る人もいましたが、それも含めて、シャレじゃなく本当に秘密にといた方がいいように思える重たい話もありました。会場には全く悲愴感はありませんでしたが、ゲスト・イベントのレベルでこういうゲームをやったのが、部外者であるぼくには少し意外でした。
 このゲームは、こんな話につながります。

「他人事だからといって、そっけなくする人はいなかった。(怖くて他人に話せないという)予想に反することが起きたのではないか」
「私の恐れは、私だけの気持ちの投影でしかない」

 その他にもいろいろな話がありました。一緒に講演会に行った mamma さんのブログ「Seminar will never die」の「ゴッドファーザーに会ってきた」に詳しく書かれています。

 ぼくがこの講演会に行きたかった理由のひとつは、30年以上にわたる日米セミナー史の生き証人であるホワイト氏の話を聞きたかったということ。
 ホワイト氏とぼくは過去にARC日本社経由のFAXで1往復だけのやりとり(ロバート・ホワイト氏書簡)があったものの、彼のメールアドレスが死んでてその後連絡がとれず、ARCも解散してしまっていました。当時のFAXで彼からぼくに投げかけられていた問いにも返答できなくなっていたので、改めてコンタクトを取りたかったというのが、もうひとつの理由です。
 講演会後にはホワイト氏と名刺交換して、それほど長時間ではないものの業界史に関わる部分等も話せたので、ぼくの目的は充分すぎるくらい達成できました。

 会場でホワイト氏から聞いた話の内容は、おおまかには以下のとおりです。現段階ではまだ書くのを控えた話もあるので、文脈がわかりづらいですがご容赦。

White03①ASKとARCのセミナーの違いは、見てないのでわからない。聞いた限りでは、ARCは「気づく」ところまでを扱っていたのに対して、ASKは実生活に成果を出す実践的なセミナーだ。
②ARCグループは2000年に全て閉鎖した。ASK社長のように、ARC時代に関わっていた人が引き継いでセミナーを開催しているケースはあるが、自分は一切タッチしていない。
③1998年に、それまでARC代表だった菅原恭二氏を解任した理由は、彼が優秀なトレーナーだったがビジネスには向かなかったから(いまは書くのは控えますが、もうひとつ別の理由もあったとのこと)。
④自分は、セミナーによって特定の信仰を勧めることを望ましいとは思わない。ただし、口先だけで信仰を語る人に対して、その人の心と信仰をつなげたいとは思う。信仰をもたない人については、信仰をもった方がいいと思う。自分はプロテスタントだが、礼拝には通っていない。キリスト教は偉大だが、その教えは曲げられてしまい、支配や権力や罪を生み出している。
⑤来月、アメリカで自己変革トレーニングの会社を新たに設立する予定で、社名は「Extraordinary Resources」。そのセミナーは、ASKのようにARCのセミナーを発展させたものになる。ARCを解散してから6年間、いろいろ考えながら他団体のセミナーなどを受けてみた。印象に残ったものはたくさんあったが、その多くは1都市だけで開催されている小規模なセミナーだった。こうしたものを、より多くの人に提供したい。
⑥もう歳なので、自分で直接運営する会社を日本に設立するつもりはないが、ライセンスを供与してフランチャイズを日本で活動させたいと思っている。地元に通じた人物にライセンスを出し、地域密着型のセミナーにしたい。また、セミナー開催だけではなくDVDやオンラインでのコンテンツ提供をしたり、iPodで聴けるものも販売したい。

 彼が語ってくれたARC解散の年代などが講演会資料と若干違っていることに後で気づきました。後で、メール等々で確認したいと思っています。
 また、自己啓発セミナー対策ガイドの「フリートーク掲示板」で、アレクサンダー・エベレット氏が昨年亡くなったという話も出ています。なおのこと、セミナーの歴史についてホワイト氏に教えてもらいたくなってきます。

Dvd ASKでは、昨年11月にもホワイト氏を招いて講演会を行っています。そのときの様子をおさめたDVD『LIVING an Extraordinary Life 驚異的な人生を送るとは』(3,500円)が会場で売られていたので、ホワイト氏の著書『LIVING AN Extraordinary Life』(3,000円)とあわせて買ってきました。

Chahan_1  講演の最中、ホワイト氏が会場の向かいにある中華料理店のチャーハンが美味いと絶賛していました。講演後、ぼくは同行者2人と一緒にその店でそのチャーハンを堪能。味は、素晴らしく普通でした(笑)。
 ホワイト氏は、確かARC時代に近所のラーメン屋が好きだったと著書で書いていた記憶があります。中華好きなのでしょうか。

参考記事(自己啓発セミナー対策ガイド)
ロバート・ホワイト氏書簡
ARC社の主力が再集結、ロバート・ホワイトも来日
ARCインターナショナル(ライフ・ダイナミックス)
セミナー家系図

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