『純愛』出資者こそ最大の被害者では……
先週発売の週刊実話(08.07.17号)で、
ゆず・北川悠仁の実家「宗教団体」が支援の怪しいビジネス
という記事を書きました。このブログやオーマイニュースで取り上げてきた偽装映画『純愛』と、北川悠仁の親族らが経営する自己啓発セミナー会社「ETLジャパン」・宗教団体「かむながらのみち」の関係をリポートする内容です。
そして今週発売された週刊朝日(08.07.18号)では、ぼくが書いたものではないですが、こういう記事が載っています。
あの“怪しい映画”を外務省や議員が「応援」していた!
参議院議員・山谷えり子氏らが偽装映画『純愛』を支援し、北京での上映会に高村外相など計4人の議員が祝電を送った件についての記事です。議員の支援については、すでにぼくもオーマイニュース 山谷えり子議員らが偽装映画『純愛』を支援 で書いています。この部分については週刊朝日の記事もおおむね同じ内容ですが、週刊朝日では、映画の出資者らのコメントや証言がみっちり載っていて、この映画のインチキぶりが非常によくわかります。
たとえば、記事中、こんな出資者コメントがありました。
「いちおう出資者には年に2回の収支報告があった。でも、大ざっぱで明細がない。中国のロケハンで4千万円も使っていたので尋ねると、「中国人に監禁され、払わないと帰さない、と言われたから』と荒唐無稽な説明をされた」 |
映画の制作資金として出資者からかき集めたカネは約1億円です。その4割にもなろうかというカネを、撮影する前から「中国人に監禁」されて取られてしまうとは。これが本当なら、収支報告と別に出資者に報告・説明すべき大事件なのではないでしょうか。仮に、監禁の事実などなく、使途不明のカネについて言い逃れをするためのウソだとすれば、「日中友好をうたった映画の関係者が、中国人のせいにして言い逃れするなよ」という話になると思います。
中国という国でのことですから、何が起こるかわかりません。監禁事件が本当なのかでっちあげなのか、判断はつきにくいですが、いずれにしても、『純愛』が自分たちの仲間であるはずの出資者に対しても非常に不誠実であることがわかるエピソードです。
オーマイニュースや週刊朝日の記事には出てきていませんが、もうひとつ、『純愛』が出資者に対していかに不誠実であるかを示す資料が手に入ったので、その一部を紹介しつつツッコミを入れたいと思います。オーマイニュース 山谷えり子議員らが偽装映画『純愛』を支援 が掲載された日付と同じ6月24日付で、出資者に配布されたリリースです。発信者は『純愛』製作実行委員長の奥山省吾氏です。
この中に、「オーマイニュース」と媒体名を特定した上で、以下のような記述がありました。
6.ネット記者の記事、取材について |
ウソも混じっていますが、全体的には、事実を奥山氏の勝手な解釈で釈明の材料にしているという感じでしょうか。
ぼくとしては勝手なことを言われて正直ムカつくんですが、この文面を見ていると、奥山氏が実はオーマイニュースや藤倉に対してではなく、出資者に対してこそ不誠実であるということがわかります。上記の文章について、ひとつひとつツッコミを入れていきます。
純愛サイドとしてはオーマイニュース及びその記者からの取材に対し、担当弁護士とも協議の上、取材拒否の姿勢を貫いております。 |
↑これは完全なウソです。今年1月に藤倉が札幌で奥山に突撃した際、奥山氏は「弁護士に聞いてください」と言い、「取材拒否」とは言いませんでした。3月に名古屋で奥山に突撃したときも同じでした。
実際ぼくは、1月の突撃の後には『純愛』側弁護士と会談し、オフレコで『純愛』側の事情について説明を受けました。3月も、こちらの質問事項を弁護士が奥山氏に確認した上で答えてくれており、その内容はオーマイニュース 偽装映画『純愛』、名古屋で公開 に記載しています。
このことからわかるように、奥山氏は「取材拒否の姿勢を貫いて」などいません。
したがってオーマイニュースに掲載されている記事は、正規の取材に基づくものではありません。 |
↑これは事実ですが、だからどうしたって感じですね。正規の取材じゃなくたって、記事の内容に誤りがなければ問題ないと思います。 仮に、正規の取材がない記事はデタラメだと奥山氏が言いたいのだとしたら、奥山氏がぼくに対して何ら正規の取材もせずに流したこのリリースもまたデタラメだということになります。
奥山氏は、自分の行動が自分の主張をぶち壊していることの滑稽さに気づいていないのでしょうか。
数年前に正規の取材なしに中傷記事を掲載し、それに対する説明も謝罪もない。 |
おそらく藤倉の個人サイト「自己啓発セミナー対策ガイド」内にある 小林桂子・映画企画 3ヶ月で7,000万円のカネ集め と 小林桂子映画、クランクイン決定 の2本の記事を指すと思われます。
いずれも物証・証言から確証を得て書いた記事であり、この記事に対して奥山氏らからは「内容が事実と違う」といった類の指摘は一切ありません。事情説明も求められておらず、謝罪の要求もありません。ともと藤倉が説明や謝罪をすべき状況にないため、説明や謝罪がないことを取材拒否の理由にされる筋合いはありません。
「純愛」公開後も、偽名を騙って観客に成りすまし小林桂子さんに近づき、写真を撮影、ウェブ上に無断で配信するなど、取材者としてのモラル欠如が著しい。 |
↑偽名を使ったこと自体は事実ですが、モラルの欠如によるものではありません。むしろ、ほかの観客もいる劇場内で興行の妨害につながるような形での取材はしないというモラルに基づいたものです。
今年1月のオーマイニュース 偽装映画『純愛』の札幌公開始まる・『純愛』の小林桂子氏を直撃取材・『純愛』小林桂子氏に直撃で恐縮です といった記事・写真・動画でのリポートのほか、その後の記事でもこのときの写真等を使用しています。
一般的には好ましい取材方法ではないと思われるかもしれませんが、昨年12月の第一報の際、『純愛』側は取材を受けるような受けないようなどっちつかずの態度で返答を引き延ばしながら、結局、記事の掲載直前になってから「お答えできません」と回答してきていました。また、NPO法人の偽装、公式サイト上での虚偽説明(当ブログ 映画『純愛』公式サイトのウソを暴く! 参照)などから、常識が通用しない人々であることが明らかであり、こうした人物や団体に対する潜入取材としては、とくだん問題ないと思います。
また、たとえ潜入取材であっても、現場で彼らの活動(この場合は映画の上映)を妨害しないというのは鉄則です。上映会場で混乱をきたすような取材方法は「業務妨害」になりかねません。会場や観客に迷惑をかけず、現場での活動妨害は慎むというモラルに基づけば、むしろ素性を明かさない取材方法がベターでした。
この取材のすぐ後、会場の外に出てから、興行の妨害につながらない形で「オーマイニュースです」と名乗って小林氏らに直撃取材をしています。上記の記事・動画などを見ていただければわかります。
なお、前述の通り、この取材の後に奥山氏らは弁護士を通して取材に答えています。ですから上記の「モラル」について奥山氏がどう解釈しようと、1月のこの件は彼らが取材を拒否する理由になっていません。
関係者への取材に際し、「純愛サイドは~と言っているが」と虚偽を申し向けた上で話を聞きだそうとしている。 |
↑何について「虚偽」と言ってるのか不明ですが、取材申し入れの際、相手に説明するのは、基本的に記事として掲載予定あるいは掲載済みの事実だけです。もちろん、取材を受けてもらえて細かいやりとりができるようになったときには、未確認情報をぶつけて尋ねたりカマをかけることも一般論としてはありますが、幸いにも(?)『純愛』に関しては、そんな微妙な取材をしなくても、ぼろぼろとインチキ振りが見えてきています。
そういうわけなので、取材の際の藤倉の説明が虚偽なのだとすれば、実際に掲載されている記事にも虚偽が含まれるだろうと思います。なぜ奥山氏が記事の内容について反論しないのかナゾです。
掲載内容も独自の先入観に基づくものであり反論する必要性さえ感じられない。 |
↑ここが最大のポイントです。
奥山氏が、記事には問題があと認識しており、それによって関係方面に迷惑や心配をかけていると認識しているにも関わらず、記事に反論しないのだとしたら、関係者に対してあまりに不誠実なのではないでしょうか。1億円ものカネを出資してくれた仲間たちを、何だと思ってるんでしょう。
これまで奥山氏からは、オーマイニュースや藤倉に対して一切、抗議は来ていません。ここで紹介しているような内部文書の類でも公式サイト上でも、奥山氏が記事の内容について具体的に間違いも指摘している場面を、ぼくはいちども見たことがありません。奥山氏らの代理人弁護士についても同様です。
しかも、『純愛』公式サイトでは2007年12月21日付の声明で、名指しこそしていませんが週刊朝日やオーマイニュースに記事について、以下のように言及していました。
結果的に12月18日頃に公表された記事は事実に反する誹謗・中傷に終始しており、私達は甚大な損害を被っています。この記事掲載につきましても、現在、前述の法律事務所と対応を協議しています。 |
↑この一文も、結局ウソだったということなんでしょう。
なぜなら、今回の6月24日付の文書では、記事の内容について「事実に反する」とする主張が一切ないからです。現在、上記の文言は『純愛』公式サイトから消えています。つまりオーマイニュースの記事に対する見解は、「独自の先入観に基づくもの」という程度の内容に変わっており、記事の内容が「事実に反する誹謗・中傷に終始して」いるとの主張を撤回してしまっています。
こうして説明内容をころころ変えたりウソをついているのを見ると、この映画をめぐる問題の最大の被害者はやはり出資者たちであるということを、改めて痛感させられます。
ほかにも奥山氏が出資者に対してウソをついている証拠・証言はあるので、オーマイニュースでのリポートはまだ続けたいと思います。