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2006年5月31日 (水)

グループ・ダイナミックス学会で自己啓発セミナーのシンポ

 グループ・ダイナミックス学会で自己啓発セミナーに関するシンポジウムが開かれるというので、行ってきました。
 反カルト運動に関わる研究者や「正統派」の心理学研究者・実践者などが発表者・討論者として登場しましたが、自己啓発セミナーについてレポートした小久保温氏は物理学が専門で、心理学等の研究者ではありません。討論者の西田公昭氏は、自己啓発セミナーも含めた「カルト」の心理操作テクニックを「マインドコントロール」であると主張する社会心理学者ですが、自己啓発セミナーのことを直接知っているわけではありません(今回のシンポでご自身が認めていた)。
 要するに、自己啓発セミナーを研究している心理学者は皆無らしいんですが、今回のシンポジウムでは、研究どころか自己啓発セミナーに関する基本的な情報や議論すら心理学者の間では交わされていなかったらしいことがわかりました。そんな中で自己啓発セミナーをテーマにしたシンポジウムが開かれたのは、かなり実験的というか挑戦的というか、とても貴重な企画だったのではないかと思います。

 自己啓発セミナーに関する発表内容は、小久保氏「自己啓発セミナーに関する情報」を見ればだいたいわかるので割愛します。
 心理学者サイドからの感想や議論を聞いていると、みなさん自己啓発セミナーを心理学業界の「異端」と捉え「正統派」とは「似て非なるもの」とするスタンスながら、自己啓発セミナーを「正統派」と区別する明確な基準をもっていない(ぶっちゃけ、中身を見てみないとわからない)という点で一致していたように思います。セミナー会社や関連団体、自己啓発セミナーの影響を強く受けたセラピストのチラシやHPの記述を見ただけでは、専門家でも「正統派」との区別はつかないようです。
 しかし非構成式Tグループを開催している南山大学の中村和彦氏は、自己啓発セミナーと「正統派」Tグループの違いをこう指摘していました。
「Tグループでは、最終的に何らかの事後ケア、フォローを要することはあっても、結論を出すために参加者を操作することはしていない。グループが(議論等々を)未消化のまま終わることも多々ある」
 自己啓発セミナーは、人数や参加者の傾向と無関係に常に同じ結末に導き勧誘活動に向かわせます。勧誘活動以前の第1・2段階でも、初日から最終日までのストーリーも個々の実習項目も最初から決まっていて、参加者に求められる「望ましい結末」も常に同じです。

 正統・異端の境界線あたりに話が及ぶと区別は非常にややこしいんですが、典型的な自己啓発セミナーに関しては比較的語りやすいのではないかと思いました。自己啓発セミナーに詳しくない心理学者ばかりのシンポジウムだったのに、具体的情報に触れた瞬間に違いを指摘できたわけなので。
 同時にシンポジウムでは、自己啓発セミナーと自分たちのセラピーが外見的には区別しにくいことを懸念する声もありました。でも、中身をちゃんと検証すれば区別が不可能というほどではないんだから、ぜひとも心理学者に自己啓発セミナーを研究してもらいたいもんだと思いました。両者を区別できる情報があるなら、「正統派」業界の利益にもなるし、セラピーのユーザーがセラピーを選択する上でも参考になります。
 正統とか異端とかって考え方(というか表現)は権威主義っぽいので、ぼくは大嫌いです。でも、具体的根拠をもって正統・異端を語れるのであれば、世の中のメリットとしては歓迎すべきことなのかもしれません。宗教上の正統・異端論と違い、具体的根拠を挙げた上での手法・倫理に関する正統・異端論なら、非科学的な神学論争になる危険性も低いでしょう。

 自己啓発セミナーに関する研究はこれまで、宗教社会学の分野で行われるケースがほとんどでした。奇しくも最近、「自己啓発セミナーの語られかた~集団内の自律と他律をめぐって」という修士論文がネット上で公開されています。これも社会学系の論文っぽいです。
 「自己啓発セミナーの語られ方」の分析はとても面白いし、自己啓発セミナー業界が多様化し輪郭がぼんやりしてきているという見方も的を得ています。一方で、セミナー団体やその団体のカリキュラムに関する情報は、ちょっと危うい内容です。団体情報をダイジェストにしちゃった宗教社会学等の論文を引用しながら、個別の団体についてさらにダイジェストで語っているので、引用元の論文以上に情報がアバウトな部分があります。
 団体情報がアバウトなら、学者村の作法にのっとった議論としては成り立っても、情報の社会的価値はいまいちです。

 仮に心理学者が「正統と異端はこう違うんだ!」みたいな論文を書ことうしたら、自己啓発セミナーの具体的カリキュラムを検証しないわけにはいかないから、その部分の情報がアバウトになることは考えにくい。やっぱり、社会的なメリットを期待できるのは社会学より心理学なのかな、という気がしてきます。西田公昭氏の著書『マインド・コントロールとは何か』は少数のサンプルを元に不用意に広範囲に一般化してしまった点が難点ですが、その轍さえ踏まなければ大丈夫なのではないかと思います。
 でもまあ、そもそも心理学者が自己啓発セミナーを研究してくれるのかどうか、ってのが大きな問題のようです。「原則リベラリズム(櫻井義秀氏『「カルト」を問い直す』参照)」という“大人の事情”で、自己啓発セミナーみたいなものを研究テーマにしにくい構造が心理学研究者の間にはあるとか。それでも、グループ・ダイナミックス学会のシンポジウムを後にする際、関係者に「ぜひ、社会心理学者に自己啓発セミナーを研究してほしい」と言って帰ってきました。
 実は、上記の論文を読んだのは帰宅後なんですけどね。

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